こんにちは.混成競技ディレクターの眞鍋芳明です.
今回は,2024シーズンの今後における強化方針についてお話したいと思います.
公的な話は日本陸連のサイト「2023年度強化方針発表レポート」をご覧下さい.
ここでは準公的(?)な立場での意見を述べさせて頂きます.
ワールドランキングと出場権獲得に立ちはだかる壁
まず,最初に言いたいこと.それは「混成競技は世界の道が極めて狭い」ということです.
現在,世界大会に出場するのは参加標準記録を突破するか,世界陸連が定めるワールドランキングでターゲットナンバー入りする必要があります.そして,混成競技におけるターゲットナンバーはなんと全種目のなかで最も厳しい24位.これはトラック種目でいえば準決勝進出レベルにあたります.確かに混成競技は運営が大変ですし,人数が多いとそれだけ時間もかかります.しかし,,,24位という順位はあまりにも厳しい.かつては32位まで出場できたのですが,組数を4から3に減らされてしまい現状にいたります.
※ワールドランキング制度については,下記サイトをご覧下さい.
そして,ワールドランキングを上げるには,カテゴリーの高い競技会に出場し,好記録を出さねばなりません.こちらも日本にとっては大きな逆風となっています.なぜなら,日本において高いカテゴリーとして混成競技が開催されるのは日本選手権のみ(Bカテゴリー)だからです.
試しに,下記のサイトを利用してポイントを計算してみてください.
仮に日本選手権(Bカテゴリー)で,8000点をとって優勝すると,リザルトスコア(上記サイト上ではPerformance Pointsと表記)が1126点,プレイシングスコア(上記サイト上ではPlace Pointと表記)が60点となり,パフォーマンススコア(Total Points)は1186点となります.これが一般的な国内の競技会であるFカテゴリーになると1136点にまで下がります.一方,Aカテゴリーになるとパフォーマンススコアは1206点,GLカテゴリーになるとなんと1236点にまで跳ね上がります.
そして,2024年6月28日現在,国から3名という限定条件の下でワールドランキングをみると,十種競技での24位は1211点となっています.おそらくパリ五輪に出場するためには,この1211~1220あたりが当落線上になります.
必須となる海外の大会での戦い
つまり,国内だけでワールドランキングを上げのは困難というより,ほぼ不可能です.となれば,カテゴリーの高い海外の試合に出場し,好記録と順位をとらねばなりません.そして,近年では,こうしたカテゴリーの高い競技会に出場するにはAR:Athletes Representatives(公認代理人)を通して交渉する必要があります(もしくは選手自身が交渉).このように,近年,世界に舞台に立つためには色々な意味でハードルがどんどんあがっており,選手やコーチの努力だけではなく経済力まで必要になっています.
以下,競技者代理人規則
という状況を踏まえての強化方針ですが...
正直なところ,次年度の最大目標である東京世界陸上に出場するためには,5月に韓国で開催されるアジア選手権に「アジアランキング1位」でエントリーし,優勝することが現実的に最も可能性の高い方法となります.いわゆるワイルドカード的な出場方法であり,これであればターゲットナンバー24位に入っていなくとも出場が可能です.事実,昨年度の丸山選手はこの方法でブダペスト世界陸上に出場しました.
となれば,アジア選手権前にランキングを上げる必要があります.同時に日本選手権が終わった現在,次の日本選手権まで高カテゴリーの国内競技会はありませんから,世界を目指すならば自ずと海外の競技会に眼を向けるしかありません.
高カテゴリーの混成競技国際競技会
現状では,8月にポーランドで開催される3RD WIESŁAW CZAPIEWSKI MEMORIALあたりがターゲットになるでしょうか.いくつかのトップ選手も視野にいれているようです.
もちろん世界を目指すだけが強化委員会の仕事ではありません.七種競技であれば,まずはアジアでのメダル獲得を継続,複数メダルを獲得することが重要になります.しかし結局のところアジア選手権に出場するためにもワールドランキングを上げなければなりません.結果として,今後代表を目指す選手達は,おのずと海外で戦うことを視野にいれなければならないということです.
日本代表として国際競技会に出場するためにはワールドランキングが鍵を握ります.我々強化委員会としても,積極的に海外の競技会に選手が出場できるようにサポートをしていきます.
日本陸上競技連盟混成競技ディレクター 眞鍋芳明