【レポート】国際陸連混成ツアー大会「3rd Wiesław Czapiewski Memorial」:丸山優真選手(住友電工)が日本歴代3位8021点で2位

2024年8月31日〜9月1日にポーランドのビドゴシュチで開催された、「3rd Wiesław Czapiewski Memorial」に丸山優真選手(住友電工)が参戦した様子をレポートします。

この大会は国際陸連混成ツアー大会(WA Combined Events Tour)のゴールドレベルに格付けされ、ワールドランキングに反映される大会カテゴリーではAランクの上位大会です。日本で開催される同等ランクの混成競技大会はなく(日本選手権がカテゴリーBで最上位ランク)、例年5月に開催される「SEIKOゴールデングランプリ」と同じカテゴリーに区分される大会です。

丸山選手は4月にも同じゴールドレベル大会(カテゴリーA)の「MUTISTARS」(イタリア・ブレシア)にも参戦し、パリオリンピック出場に向けてワールドランキングの向上を狙っていました。ご存知の方もいると思いますが、優勝争いをしていたにも関わらず、棒高跳びでマットから落下して左膝を負傷し、無念の途中棄権。この時点でパリオリンピック出場は黄色信号となり、6月の日本選手権出場も危ぶまれる状況でした。

日本選手権は膝の怪我も完治しないままの強行出場。それは丸山選手のコメントにもあるように「パリ(オリンピック)に出たいという気持ちで取り組んできた今までを思うと、最後までやりきりたかった」という強い思いがあったようです。そんな状況でも自己新記録(7870点)での優勝。着実に力をつけていることを証明してみせました。

日本選手権も終了し、すぐに次の目標を来年の東京世界陸上に切り換えて、膝のリハビリとトレーニングを並行して実施していきました。東京世界陸上出場のためには、来年の5月に開催されるアジア選手権(韓国)で優勝する事がワールドランキングの向上とエリアチャンピオン枠の獲得の両方を狙える事から、最大の目標はそこに置くものの、24年シーズンの1、2戦ともに不完全燃焼であったことから今大会の出場を決意しました。

前置きが長くなりましたが、大会のレポートを続けます。

「3rd Wiesław Czapiewski Memorial」の出場選手は、大会直前のワールドランキングで27位(Felix WOLTER:GER)、30位(Vilém STRÁSKÝ:CZE)、32位(Risto LILLEMETS:EST)など、それぞれが東京世界陸上のターゲットナンバー(出場選手枠数)の24位にワールドランキングを押し上げるべく戦略的に参戦し、それは丸山選手(当時のランキングは41位)と同じだと思われます。記録こそ8000点〜8300点と丸山選手より上位選手たちではありましたが、夏の期間にしっかりとトレーニングも積めて順調にコンディショニングできていた丸山選手にとっては、「いい勝負ができる」との手応えを感じていたとコメントしていました。

この時期のヨーロッパとしては異常気象では?と思えるほどの気候(最高気温が23〜25℃)でしたが、湿度はそれほど高くなく最高のコンディションで幕を開けました。

【100m】10秒77+2.5(5位 912点)
スタートは良かったものの、中盤の競り合いで固くなってしまい、後半の伸びを欠く。「もう少し行けたのでは。。。」という思いはあったが、結果は10秒77(+2.5)と自己タイの好タイム!夏場に取り組んできたスプリントトレーニングの成果が発揮されて上々の滑り出し。
気分を良くして走幅跳へ。

【走幅跳】7m15+2.1(3位 850点)
風の強弱の波がかなりあり、若干、風が落ち着くのを待つような場面もあったが、1回目に7m15(+2.1)とまずまず。つま先が踏み切り板に乗った程度だったので、更なる記録の更新に期待がかかった。2回目は踏切はジャスト!であったが空中でバランスを崩し着地の体制まで持って行けずファール。3回目も記録更新ができず。結果は1回目の7m15。

【砲丸投】14m19(4位 740点)
今年に入りコンスタントに14mオーバーしているために、練習通りに投げ急がず。。。と試技に入ったものの、1回目は12m85と失敗投擲。しかし、落ち着きを取り戻し2回目、3回目と記録を伸ばし14m19とまずまずの結果。

【走高跳】1m91(7位 723点)
背中(胸椎)の怪我からの回復以降にも足首の怪我などに悩まされ、以前のような跳躍ができなくなっている走高跳。1m82、1m85と1回で成功したが、1m88に入り踏切位置が若干遠く3回目でなんとかクリア。1m91も3回目に観客の手拍子に乗ってバーを揺らしながらクリアしてガッツポーズが出る。

【400m】49秒43(5位 841点)
100m同様、しっかりとスプリントトレーニングが積めていただけに、自己記録(48秒96)も視野に入っていた。しかし、バックストレートの向かい風が強く、前半で少し力を使ってしまい、ラスト100mが伸びなかった。結果は49秒43。今季、50秒を切れていなかったので、目標には少し及ばずとも満足のいく結果に。

【1日目終了】4066点 3位

1日目を終えて、久々の1日目4000点オーバーの4066点。順調に行けば総合得点8000点が見えてきた。他の選手たちが自己ベストペースを落とす中、丸山選手1人が自己ベストペースを上回り、メダル圏内で折り返しとなった。

【110mハードル】14秒20-1.1(2位 949点)
昨日からホームストレートは少し強めの追い風が吹いており、110mハードルの風次第では追い風参考記録になってしまう心配もあった。そんな中、1台目の入りを7歩から8歩に変えたことで、前半をスムーズに走る事ができ、終始トップを譲らずにフィニッシュ。結果は14秒20(-1.1)総合結果は公認記録となることは確定したが、調子・流れともに良かったので、もう少し風に恵まれたら、更なる得点の積み上げをできただけに残念である。

【円盤投】42m08(6位 707点)
円盤投も重点的にトレーニングしてきた種目。最近の練習では43〜45mを超える投擲もコンスタントにできていたが、本番試技に入ると力んでしまう傾向があった。1投目39m62、2投目40m35。悪い流れが出てしまった。ターンの前半を落ち着いて入るように修正した3投目は42m08。なんとか最低ラインはキープできた。

【棒高跳】4m80(2位 849点)
日本選手権以降、練習に力を入れてきた棒高跳。丸山選手本人も自信を持って臨めていた様子であった。4m50、4m60と順調に1回でクリアして迎えた4m70。風が不安定になり始め、時折、向かい風の状態になることもあり、苦労しながらも3回目でなんとかクリア。4m80は唯一1回でクリアして、5mもいけるのでは?と期待を持たせるも、4m90は惜しい跳躍であったがクリアならず。

【やり投】60m68(3位 748点)
棒高跳終了時点で総合2位に浮上。総合記録自己ベスト(6月の日本選手権)時は64m65を投げており、できるだけその記録に近づけることで8000点を確実のものとしたかった。1投目、少し高く上がりすぎて54m24。このままだと8000点も厳しい状況に。最低でも60mラインは超えたいところ。2投目、投擲角度をしっかり修正できて、結果は60m68。これで再び8000点オーバーを手繰り寄せた快心の1投であった。3投目はこれを超えられずに記録は60m68。

【1500m】4分36秒59(4位 702点)
4分39秒6以内で走れば8000点オーバーという状況。昨年から4分30秒のペースで1200mなどのトレーニングが出来ている事や、日本選手権は膝が万全でない状況で4分40秒31だった事を考えると、安全圏内かと思われ、順位としてはRisto LILLEMETS選手に5秒差以上をつけられなければ2位を確保できる状況であった。400m通過は想定より若干早いタイムで通過(70秒)し、その後ペースダウン。丸山選手より持ちタイムが速い選手たちが前に出なかったので、たまらず先頭に出て自分のペースをキープする。その後、中々ペースが上げられずRisto LILLEMETS選手にも抜かれ、1000m通過時は8000点オーバーの想定タイム(4分39秒6)ギリギリにペースダウンしてしまう。ラスト300mから必死の形相で再度ペースアップして、結果は4分36秒59でフィニッシュ。Risto LILLEMETS選手にも9点差(約1.3秒差)で逃げ切り、初の8000点オーバーとなる8021点で2位に!

【総合結果】8021点 2位

日本人4人目となる8000点オーバーの8021点(日本歴代3位)で堂々の2位。国際大会での8000点オーバーで自己記録の更新という偉業を成し遂げた。この結果、ワールドランキングも35位(1カ国3人カウントで28位)に浮上し、今回の遠征での目的をしっかりと達成できた。
要所要所で細かいミスもあったので、まだまだ、ポテンシャルは秘めているはず。更なる飛躍に期待したい。

丸山選手コメント

「トータル8021点での自己ベスト更新は嬉しいが、世界との差を考えるとまだまだ実力不足。アベレージで日本記録を超えておかないと世界での入賞は見えてこない。世界での入賞、その先を目指して色々とチャレンジしていきたい。」

丸山選手はそのまま帰国せず、2週間後にフランス・ボルドーのタランスで行われる「Decastar」に出場予定。この大会はオリンピック・世界選手権に次ぐ国際陸連混成ツアー大会(WA Combined Events Tour)最高峰のうちの1大会。2018年には十種競技の現世界記録(9126点:Kevin MAYER選手)が出た大会でもある。この大会の様子も後日レポートさせていただきます。
 

日本陸連強化委員会 混成競技強化スタッフ 田代章

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